「人としての尊厳を取り戻す闘い」を支援する会 通 信 №13
2011年 2月号 発行日 2011/2/21
控訴審 判決期日:3月2日(水)午後 1時10分から
いよいよ高裁判決
来る3月2日、これまでの2回の口頭弁論を経て、「判決」が下されます。
高裁では、地裁において提出された準備書面、証拠、陳述書等の全てが今一度吟味され、控訴審で新たに提出された書面、書証がそれに追加され検討されます。先の第二回口頭弁論において、裁判官より、判断するに充分な主張が控訴人(橋本さん)、被控訴人(明和会、医療センター)双方から出つくしたものと結論付けられ、弁論終結に至りました。
来る3月2日の判決期日には、できるだけ多くの皆様に裁判所へおいでいただき、ともに判決を聞いて下さることを、切に願っております。
第二回 口頭弁論
昨年12月17日、控訴審第二回口頭弁論が開かれました。当日は、寒い中、たくさんの方々に駆けつけていただきまして、心から感謝申し上げます。
今回の口頭弁論においては、控訴人(橋本さん)からは、「第2、第3、第4準備書面」が、被控訴人(医療センター)からは、「第2準備書面」が提出されています。
控訴人の「第2準備書面」では、精神保健福祉法第33条の憲法違反を基礎付ける新たな主張として、次の3つの点が主張されています。
1.憲法31条の適正手続保証違反と「精神医療審査会制度」の問題点
2.「精神保健指定医制度」の脆弱性とたった1人の指定医の判断によることの問題点
3.精神科診断基準の非科学性(精神医学の不確実性)
また、「第3準備書面」では、第一回口頭弁論で、被控訴人(医療センター)から出された「第1準備書面」に対する反論が丁寧になされています。
さらに、「第4準備書面」においては、本件の背景にある日本の精神科医療の実態を、他の先進国との比較も含めてまとめられ、その現状を示す具体事例(患者の体験など)が書証として付されています。
被控訴人(医療センター)からの「第2準備書面」は、控訴人から出された「第2準備書面」への反論で、「精神医療審査会」についての内容です。
この度の弁論においては、特に、控訴人(橋本さん)から出された「第4準備書面」に付された書証となる精神科医療の現状に関しての具体事例報告文章を、ご自身の体験より作成して下さった支援者の方々には、この場を借りて、支援する会代表として心からお礼を申し上げます。
又、控訴人側から内田博文教授の学術証人申請を行っていましたが、却下されました。裁判官は「既に陳述書もあり、準備書面等で充分に主張がなされていると判断でき、本日をもって、弁論を終結する」と宣言しました。このことは、解釈の仕方によれば、原判決(地裁における判決)において、一切判断材料の俎上にさえ上らなかった内田教授の「意見書」に、高裁の裁判官は注意を向けざるを得なくなったとも考えられます。
支援者集会 報告
集会には橋本さん、大田原弁護士を含め、多くの支援者に参加していただきました。大田原弁護士より、第二回口頭弁論の中でのやり取りについて、具体的に説明がなされました。
大田原弁護士としては、どうしても、精神保健福祉法第33条の憲法違反という視点を裁判官に植え付けるためにも、内田博文教授の証人申請を実現せんとしていたのですが、残念ながら、裁判官の「弁論終結」に従わざるをえません。
最後にもう一つ、精神科医療の現状を訴える多くの具体事例や資料等が、支援者の皆様からのご協力により寄せられたことに、今一度、お礼を述べさせていただきたいと思います。それらは、一つ一つ読んで怒りがこみ上げてきます。
裁判官に伝わるか、伝わらないかは別にして、このような現状をこのまま放置することはとてもできないと、あらためて強く感じました。裁判の枠を超えて、裁判の終わった後も、我々に残された課題であることには変わりありません。ご協力をいただいた皆さま、本当にありがとうございました。
支援者集会 予定
高裁での判決がどうでるのかわかりませんが、出方によれば、最高裁で争うことも含めた方針が話し合われることになります。本件訴訟の大きな節目です。是非、多くの方々にご参加をお願いします。
場所:当日、裁判所にてお知らせします
時間:法廷終了後、午後 1 時30~ (1~2時間程度を予定しております)
控訴人 橋本容子さんから
森島代表も申しましたように、この度、第二回口頭弁論のために、我々の協力要請にお応えいただく形で、支援者の方々より、深刻な人権侵害が横行する精神科医療の現状を示す具体事例、及び資料をご提供いただきました。私からも、厚く御礼を申し上げます。
限られた時間の中で寄せて頂いたものですから、まだまだ隠れた事実があるものと思われますが、私どもの手元に届いたものだけでも、見れば体が震えるような怒りを覚えます。
実際に、本件の書証とすることが適わなかったものもありましたが、この機会に、多くの方々に精神科医療の実態を知って頂くためにも、今回、皆さまにご紹介したいと思います。
私が、過去の通信の中で『人権侵害のオンパレード』『精神病院は人権蹂躙の巣窟』と述べたことの具体例が、そこには示されております。言うまでもなく、ご紹介する体験談や資料は、全て事実です。それもごく最近から数年前までに起きた事柄です。
21世紀の現代に、先進国であるはずの我が国において、精神病院という特殊な環境下では、前近代的、非人道的行為が、当たり前のように行われている事実を知ってください。病気になったことには当人に何の責任も落ち度もないのに、苦しむ患者がどのように扱われ、我々精神病者が日々どのような暮らしをしているか、どうか、関心を寄せてください。そして、周囲の人々にも広く伝えてくださることを願っております。
寄せていただいた資料、体験談を、紙数制限のなかでも可能な限り掲載させていただくため、「通信13・別冊」という形で発行いたしました。本「通信13」と併せて、是非とも熟読していただきますよう、お願い申し上げます。
今回ご紹介することが叶わなかったものも含め、資料、体験記をお寄せくださった皆さまには、重ねて御礼を申し上げます。
その後いただいたカンパへのお礼
前回報告(通信12号)以降、以下の方にカンパをいただいております。ここに掲載してお礼を申し上げます。ありがとうございました。 (敬称略)
ほっとスペース八王子 有志 300円
お知らせ
○ 雑誌『部落解放』2010年12月号(2010:638号)に、大田原弁護士の原稿が掲載されています。本件訴訟を通し精神科医療の現状における人権侵害に関して、将来的にもケーススタディの資料となるよう配慮して作成されたものです。ご一読下さり今後の運動にお役立てくだされば幸いです。
○ 『全国「精神病」者集団』 公式サイトにおいて、橋本容子さんの裁判情報を随時アップしていただいております。 http://www.jngmdp.org/
○ 『ほっとスペース八王子』 公式サイトにおいて、橋本容子さんの裁判情報を随時アップしていただいております。 http://homepage2.nifty.com/hotspace/
おわび
「法律ビギナーさんのための裁判講座 第3回」は、勝手ながら、都合により休載させていただくことになりました。忠心よりお詫び申し上げます。
尚、次号「通信14」から、通常どおりの連載再開を予定しております。
「人としての尊厳を取り戻す闘い」を支援する会・呼びかけ人
<代表> 森島 吉美 (広島修道大学 教授)
宇都宮 富夫 (八幡浜市議会 議員)
江嶋 修作 (解放社会学研究所 所長)
大久保 陽一 (いのちくらしこども宍粟市民ネットワーク 代表)
金杉 恭子 (広島修道大学 教授)
鐘ヶ江 晴彦 (専修大学 教授)
川口 泰司 (山口県人権啓発センター 事務局長)
佐々木 理信 (浄土宗:真明寺・滋賀県 住職)
志村 哲郎 (山口県立大学 教授)
露の 新治 (落語家)
砥石 信 (国連登録NGO 横浜国際人権センター・信州ブランチ 代表)
富田 多恵子 (びわこ南部地域部落解放研究会 副会長)
林 力 (福岡県人権研究所 顧問)
福岡 安則 (埼玉大学 教授)
山崎 典子 (浜田べっぴんの会 代表)
山本 真理 (全国「精神病」者集団会員・
世界精神医療ユーザーサバイバーネットワーク理事)
若月 好 (精神障害者当事者会「きまぐれの会」・鳥取県 民生児童主任)
亘 明志 (長崎ウエスレヤン大学 教授)
<連絡先> 森島吉美 〒733-0874 広島市西区古江西町20-18-507
E-mail:morisima(@)orange.ocn.ne.jp (@)を@に変えてお送りください