全国「精神病」者集団(公式サイトの保存用)

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09年11月26日 厚生労働省ヒアリング

厚生労働省より自立支援法および今後の新法のあり方について意見を聞きたいという要請を受けました。

結成35年間で初めてのご招待です(今まで押しかけたことはありますが)

以下の意見書を出すとともに、添付資料として青森宣言と行動計画、そして以下を添えました。

絆社発行の「精神障害者の介助支援とは」パンフ http://nagano.dee.cc/kaijosien.htm 医療観察法を許すなネット発行の医療観察法パンフ http://nagano.dee.cc/leafsample.htm なくす会のリーフ http://nagano.dee.cc/090509leaf.htm WNUSPの条約履行マニュアルを添えました。 http://nagano.dee.cc/wnuspmanual.htm

意見書は以下

厚生労働省に対する意見書

09年11月26日

全国「精神病」者集団

心神喪失者等医療観察法を直ちに廃止し、その予算を精神障害者の他のものと平等な差別なき地域生活確立のためにふりむけること

2 当面の予算措置については以下を緊急に求める

1 各地で頻発している自立支援法申請そのものへの拒否、水際作戦をなくすために、申請は権利であることを市町村及び相談支援事業所(とりわけ申請窓口をかねているところ)に徹底指導し、そのための事務費用の財源措置をとること

2 重度訪問介護について精神障害者知的障害者も対象として、財源 保障す ること。また家事援助についても必要に応じて長時間を支給し、相談 助言や見守りに使えるよう一律上限を置いてはならないという指導を市町村に行い財源保障をすること

精神科病院敷地内のおける「地域移行型ホーム」、「退院支援施設」の新設凍結と、既存施設に対して解体及び地域移行計画を立てそれに向け財源保障をすること

4 屋外の移動のみという支給によって現実には使えない通院等介護(身体介護なし)につい、医療機関、役所等でも待ち時間、さらに診察時間、交渉相談時間についても支給し、それに向け財源保障を行うこと

自立支援医療について精神障害者精神科病院入院にも適用すること

自立支援法に代わる新法にむけた議論について

新法についてはあくまで障害者権利条約の完全履行を目指し、権利主体として障害者を認めることが前提である。自立支援法廃止につづく新法設置については根底的な議論が必要であり、最低でも3年間の徹底した議論を求める。

障がい者制度改革推進本部を法律で設置し、そのメンバーについては過半数を障害者団体から参加させるとともに半数は女性とすること。他の委員についても障害者団体の推薦するものとすること。事務局長も障害者、事務局員についても過半数を障害者団体から参加させるとともに半数を女性とすること。なおメンバーの選任については国籍及び先住民についても配慮すること

各課題(たとえば障害の定義、サービス類型、支給決定システムなどなど)については推進本部下に作業部会を作りそこに障害者団体からの参加者とその推薦する委員を指名すること。

なお精神障害者団体の参加については全国「精神病」者集団及び以下3団体の参加を各団体が望む限り保障すること

NPO法人 全国精神障害者団体連合会

NPO法人 全国精神障害者ネットワーク協議会

全国ピアサポートネットワーク

口頭の説明は追加補足もありますが以下

まず緊急な予算措置を求める要望について述べます。

大前提として、精神障害者差別立法であり、膨大な予算と人手を必要とする心神喪失者等医療観察法の即時廃止を求めます。

この法律は旧政権下当時の全野党反対のもとで、衆参両院とも強行採決されたものです。とりわけ参議院では日本精神病院協会からの不正な献金疑惑追及のさなかに抜き打ち強行採決されました。

来年度の医療観察法予算は約220億円ですが、奈良県の松籟荘でのこの法の施設新設の説明会では、入院期間は原則1年半だが、1割は長期化すると言明しています。したがって、この法の予算は青天井で増えていくことになります。

精神障害者を差別的に予防拘禁不定期拘禁する人権侵害そのもののこの法に使われる膨大な予算を、緊急を要する長期入院の高齢化した方たちが地域で暮らせるための支援策に回すことをもとめます。

すでに厚生労働省の報告では5年以上の長期入院患者の退院のうち7割は死亡退院(誤りあり文末注参照)とされています。

10年20年と入院生活を強いられてきた方の人生被害は取り戻せませんが、少なくともこの方たちが、施設ではなく家と呼べるところで、丼飯ではなくお茶碗で家庭料理がとれ、そして自分なりの地域生活がおくれるための一人一人に合わせたオーダーメイドの支援と介助を保障するために予算が振り向けられるべきです。

また各地で頻発している、自立支援法の介助申請の精神障害者に対する水際作戦は厳にあってはならないとの指導を各市町村および相談支援事業所(申請受付もかねている)に徹底しそのための財源保障をすることを緊急に求めます。ある民間委託を受けていて精神のみを対象として申請窓口もかねている相談支援事業所では、4回相談支援事業所に行き、家庭訪問までしても申請させず、4回目に私どもに本人からSOSがあり、私どもから本庁に申請は権利だろう、ともかく申請させろということで5回目にして申請ができた例があります。この方は現在支給決定を受けています。そのほか、手帳の3級だから、うつ病だから、家族と同居だから申請しても支給されないということで申請そのものをさせない例が多発しています。

その上であくまで本人の希望に即した介助と支援の保障として、自立支援法の重度訪問介護精神障害者知的障害者も対象として、財源保障すること。さらに家事援助についても必要に応じて長時間支給し、相談や助言見守りにも使えるよう一律上限をおいてはならないという指導を市町村に行うとともにその財源保障をきちんと行うことを求めます。

精神科病院敷地内における「地域移行ホーム」および「退院支援施設」は、「退院」という名の新たな施設収容にほかなりません。ただちに廃止を求めます。既存のこの施設については解体および地域移行計画を個別に立て、一人一人に合わせたオーダーメイドの支援介助を保障することを求めます。そしてそれに対して財源保障を求めます。

精神障害者の治療中断を問題にする専門職および国の意識がありますが、おそらく全科の通院患者でもっとも主治医の指示通り服薬しているのは精神障害者です。これは神戸の大震災の際に、処方箋を求める患者の声の圧倒的な高さで証明されています。

通院したくとも通院自体が困難で、通院できないとき介助を必要としていても、現行の通院等介護(身体介護なし)では、医療機関、相談機関、役所等での待ち時間や診察時間、交渉相談時間については支給されません。したがって現実には使えない制度となっています。待ち時間や診察時間を100%自己負担で介助を得ている方もおられます。

とりわけ医療機関での待ち時間の不安感の解消や診察に際して支援が必要な場合にはこうした支給が最も重要です。医療機関とりわけクリニックのスタッフ配置ではとても一人一人の安全保障観確保は保障できません。日ごろから付き合っている支援者がいてこそ安全保障観が確保され、診察が受けられます。通院したくても通院できず、薬も切れてしまう現実の解決を求めます。そしてそれに向けた財源保障を求めます。

現在精神科病院では保険外の自己負担がさまざまな形で求められます。ロッカー使用料1日150円とか、あるいは小遣い銭管理料1日200円などというところがたくさんあります。自分で小遣い銭は管理できますといっても一律要求する精神科病院もあります。

生活保護の受給者はまだしも、それ以外の「精神病」者は住民税課税世帯であれば、2級の年金全てが医療費の自己負担に消え、入院中にジュース1本買うお金もない方がたくさんおられますし、いまどきシケモクを拾う人のいるところはホームレス以外精神科病院だけでしょう。小遣い銭管理料を1日200円とられたら、家族が月に1万円差し入れても本人の手に渡るのは4千円です。

また退院準備のために自立生活体験施設の利用のための外出や外泊などについても交通費すらない方が多く、退院促進事業の対象となっても本人の交通費や住宅探しで疲れてちょっとドトールでコーヒーを飲もうとしてもそのお金すら本人に保障されません。退院促進のためにも長期入院患者に対して退院準備金の支給も考えられるべきです。

こうした問題を解決するためにも、そして何より自立支援法の看板である三障害統合の趣旨に基づき他障害同様自立支援医療精神科病院入院にも使えるよう求めます。そのための緊急の予算措置を求めます。

自立支援法に代わる新法に向けた議論については何よりも「私たちのことを私たち抜きに決めるな」の原則が貫かれることが必要です。精神障害者の求める介助と支援については、今までまったく私たち精神障害者の声が反映されず、ベッドに合わせて手足を切る、あるいは引き伸ばすというお仕着せでなんとも使えない制度となっています。

精神障害者の求める介助支援については根本から見直される必要があります。

注 7割が死亡退院というのは誤りで、7割が死亡あるいは転院ということでした。

資料は以下参照

第9回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会資料(平成20年9月
3日開催)
http://www.wam.go.jp/wamappl/bb16GS70.nsf/vAdmPBigcategory60/6690A1E165F25F9B492574BA001960EB?OpenDocument

そのうち論点整理の資料1-2

http://www.wam.go.jp/wamappl/bb16GS70.nsf/0/6690a1e165f25f9b492574ba001960eb/$FILE/20080904_5shiryou1-2_1.pdf

○ また、入院期間1年以上患者は全体の65%を占めているが、退
院患者のうち、在院期間が1年以上で退院した患者の割合は約13%
であり、そのうち転院や死亡による退院は2割以下となっている。
これに対し、退院患者のうち、在院期間が5年以上で退院した患
者の割合はわずか4%に止まり、そのうち転院や死亡による退院は
7割以上となっており、入院期間が長期化するほど、退院患者にお
ける割合が下がるとともに転院や死亡による退院の割合が高くな
っている。